FAES:デモ参加者の弾圧を率いるボリバリアン警察の暗殺部隊とは

Feb 20, 2023 | 0 Comentarios

Photo: CBC, retrieved.

ここ数日、メディアでもFAESというベネズエラの特別部隊の名前が、ニュースにちらほらと挙がっています。FAESがどのような部隊なのか、なぜこれほど危険視され、住民から恐れられているのか、紹介します。

1 de febrero de 2019

Kanako Noda

Meet FAES: The Bolivarian Police Death Squads Leading Repression Against Protesters
2019年1月27日 Caracas Chronicles チーム

彼らは夜にやってくる。彼らはドアを蹴破り、窓を割って入ってくる。発砲して住宅区域内を一掃すると、屋根に狙撃手を配置する。「特別部隊が来るぞ!」「FAESだ!FAESが来るぞ!」。ジャックブーツの足音がバリオの階段を駆け上がる。長い銃、重火器、黒の迷彩戦闘服、顔は常にマスクで覆われている。死には顔がないのだ。

彼らは部屋に押し入り、住民を家から引きずり出す。抵抗すれば、自宅のリビングルームで殺される。そこにいる家族が見ていようが、彼らは気にしない。意識を失った人を、セメントの詰まった鉄パイプで殴り続ける音が近隣住民に聞こえようが、彼らは気にしない。静かに殺しにやってくるFAES(スペイン語でボリバリアン国家警察特別行動部隊の頭文字をとったもの)は、実質上、警察の暗殺部隊である。

「公式発表の数字によれば、2017年、4,998人が国の治安部隊の手にかかって死んでいる。1日につき約14人の計算だ。この国が直面しているのは、ゆっくりとした虐殺なんだ。中でも、国家警察(PNB)の特別部隊が鍵を握っている。この数字でいくと、推定では、1,500人が国家警察に殺されたといえる。これは国内で起きた殺人の30%に及ぶ数字だ」と、ベネズエラ中央大学の犯罪科学機関の研究者で、PROVEAの顧問も務めるケイマー・アビラ教授は説明する。

1月23日から始まったデモの結果、2019年1月26日時点で、推定される死亡者数は最低でも30人。そして約700人が不当に拘束されている。目撃者たちは、警察による行きすぎた暴力を訴えており、そこでは、いくどとなく犯人はFAESだという非難が挙がっている。そしてピント・サリナスやペタレ、コティサといったカラカスの低所得者の住む地区全域に展開する、全身黒に身を包んだ男たちの画像や動画は、ソーシャルメディアに広く出回っている。

4:00 PM- FAES llega a la zona 10 del barrio José Félix Ribas con Tanqueta Blindada y brigada motorizada. Vecinos denuncian que están ingresando a las casas para quitar teléfonos y no grabar tiroteos #24Ene pic.twitter.com/4laA0SXf6t

— Luis Gonzalo Pérez (@luisgonzaloprz) January 24, 2019

「この分隊の役割に、デモや抗議参加者の鎮圧は含まれていない」とケイマー・アビラ教授は言う。「国家警察にはデモ鎮圧のための特別な訓練を受けた部隊があって、彼らがこれらのデモ鎮圧のために使うのは、非致死性兵器なんだ。FAESをデモ鎮圧に投入するには、細心の注意を要する。FAESはそのための訓練も受けていないし、そのための装備もない。だから、結果的に相手は死に至ってしまう。彼らが受けた訓練は抑えるためじゃない。殺すためだ。」

だが、弾圧に対するFAESを使うことは、FAES発足当初から企図されていたことだった。FAESは2017年7月14日に、ニコラス・マドゥロによって作られた。その発表の際の演説では「犯罪とテロリズムと戦う」と、マドゥロは戦闘に対する明確な意欲を示していた。2016年までは、国内の死亡者のうち、22%に国家警察(PNB)が関与していた。だが翌年、その設立からわずか6ヶ月で、FAESはそれをさらに10%引き上げた

Ahora el FAES se está metiendo en las casa! Hay dos heridos en la zona están disparandole al pueblo Ayuda @marcorubio pic.twitter.com/ixSrqzUxD5

— rosaura (@rosaurab25) January 23, 2019

FAESのやり方は、基本的には軍と同じである。占領軍のようにエリアを掌握し、通常、そこから特定のターゲットを追い詰める。「これは市民の安全というロジックにもとづくものではない。市民の安全を守る場合、犯罪者は法の範囲内で捕えなければならない。だが彼らは対象を倒さなけれならないと考えている。そしてその対象はもはや市民ではなく、敵なんだ」とアビラ教授は続ける。

「FAESは法律に応じて動くのではなく、戦争のロジック、あるいはもっと酷い、殲滅のロジックだ。というのも、戦争は通常、比較的武力の拮抗したふたつの陣営の間で起きるが、この場合、武力がまったく釣り合っていない。こうした作戦において、国の治安部隊によって引き起こされた死を調査したところ、警察官と一般市民の死亡者数の比は1:122だった。言い換えれば、警察官がひとり殺されるたびに、122人の一般市民が死んでいるということだ。」

この警察官たちのプロフィールについての研究は一切なく、情報も公開されていなければ、彼らには説明責任もない。唯一、市民がFAESについて知っていることは、彼らの作戦行動がどのようなものかだ。そのパターンは、何百もの証言において一貫している。

体制側はFAESを「犯罪者にとっての悪夢」となるエリート集団だと説明する。だが低所得地区にとっては、実際のところ、FAESこそ国民解放作戦(OLP)に次ぐ最悪の悪夢であった。そしておそらく、FAESのモデルになっているのが、このOLPの軍警察による最貧困層の地域への襲撃だ

AL MOMENTO! Continúa un fuerte asedio de las ratas del FAES contra el pueblo de Petare. #25Enero #Caracas pic.twitter.com/1mUZrOn6bM

— Táchira Protesta (@TachiraProtesta) January 25, 2019

被害者家族は、定期的に行政監察事務所を訪問し、検察庁も訪問し、これら治安部隊の悪用を訴えている。だが、彼らの正義への望みは、ほとんどいつも挫かれる。いつだって、警察官たちは無罪放免となるのだ。

「これらの人々は、3重の犠牲になっている。まず彼らのことを顧みず、貧困を強いる政治・経済制度の犠牲、そして犯罪と社会に蔓延する暴力の犠牲、さらに、人々の子どもを殺すだけでなく、死後も彼らに犯罪者の烙印を押すような司法制度の犠牲だ。」

FAESがもたらす恐怖の鎖の最後の輪が、メディアの不在と、貧しい地区でそれについて話すことに対する恐怖だ。

「FAESの手口は、彼らが、刑罰を受けることなく、際限なく権力を行使する白紙委任状を与えられている結果だ。彼らは決して、その代償を払うことはない」とアビラ教授は言う。そして、どのベネズエラの人権団体や、ベネズエラの安全についての研究者たちが、繰り返している考えを、彼も付け加えた。もはや免責は問題ではない。彼らの方針は、根絶やしにすることなのだ。

「ベネズエラは、ここ数年間非常事態が続いており、それが新たな常識になってしまった。これは、「死の政治」に完璧な文脈を与えるものだ。そこでは、権力を持つ者が、独断的かつ無分別に誰が生き、誰が死ぬかを命じることができる。」

夜になるとFAESがやって来る。見た限り、彼らは誰にも止められない。今までのところは。

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Publicado originalmente en: Venezuela In Japanese

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